2009年 07月 04日
鑑賞日:09.07.03 鑑賞場所:シネマ・イクスピアリ その嘘は、罪ですか。 街まで車で2時間もかかる僻村にやって来た、医大を出たばかりの相馬(瑛太)。研修医として赴任してきた彼を待っていたのは、看護師と一緒に診療所を切り回している、物腰の柔らかそうな中年医師、伊野(笑福亭鶴瓶)。数年前、長く無医村だったこの地にふらりとやってきたこの医者は、高血圧から心臓蘇生、地方老人の話し相手まで、様々な病を一手に受け、村人から絶大な信頼を寄せられていた。そんなある日、伊野の元にかづ子(八千草薫)という独り暮らしの未亡人が診察にやってくる。ずっと診療所を避けていた彼女だったが、次第に伊野に心を開き始める。そして、彼女の診療を通じ、伊野が隠していた意外な素顔が浮かび上がってくる――。 <感想> 過疎地の医療という、日本の暗部にあえて切り込み、それでいて、ユーモアを織り交ぜながら、ニセ医者でありながら、村人から「神様」のように慕われる主人公。 しかし、村人からの期待が高まるにつれ、自らが犯した罪に苛まれながらの葛藤に悩みながらも、懸命に医療に真摯に向き合う姿が痛ましい。 心の通った関係がために患者についた嘘が、彼の心のすき間にできた傷を大きく広げることになるとは・・・。観ていてとても重い課題を共有されたような気持ちになった。 医者は、時に患者に嘘をつくときがある。 ただ、その時は、かなりの覚悟を持っているのであろう。 よかれと思っても、それは患者や患者の家族を傷つけることになるかも知れないので、なおさらである。 引き込まれた原因のもう一つは、キャストが良かったからだろう。 初主演の鶴瓶さん、彼の憎めないキャラがベースにあるので、こっちまで和んでしまう。その上で、医療行為を演じている真剣な眼差しも、なかなかうまいと思った。 脇を固める、瑛太くんは若いけれど場面にうまく溶け込んでいるし、看護師の余さんも、西川作品には常連の香川さんもさすがにうまい間合いで演じているなあって感心した。 八千草薫さん、往年の美人女優だが、老いてもどこかに色気を感じるのはさすが。 前作「ゆれる」での微妙な心理描写で、自分の心を鷲掴みにした西川美和監督。 今作も、前作に勝るとも劣らない内容で、西川監督とそれを支えるスタッフの丹念さと力量に終始圧倒された。 大仕掛けなセットや大金を投じたVFXが全盛な今の映画ビジネスだが、そんな小手先だけの作り方ではなく、じっくり練り上げられたストーリーと観る人の目を釘付けにする美しい構図の映像は、きっと国外で観た人も感動するであろう。 ボクは彼女が、黒澤明、小津安二郎という日本を代表する名監督に肩を並べるほどに、これからも成長していくことに疑う余地がないと思う。
by dosanko0514
| 2009-07-04 17:38
| 映画は楽しい
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
メモ
フォロー中のブログ
シネマ親父の“日々是妄言” S*e*x*t*a*n*... *- Petit sou... ユル・いんしょう派の系譜 the borderland かきなぐりプレス ぷらぷらカメラ ひトリ歩き 超音速備忘録 Discovery! 牛と娘と音楽と。息子も。 フードアトリエ ぼうがいっぽん カナダ生活♪~Cross... おじさま便り : 中年オ... 慎之介の単なるボヤキ Bravo! Birds 徒然なるサムディ ★☆★風景写真blog★... Tuc家のまぬけ 星のカケラ 七月のうさぎ(休止中) ぴあのの我楽多箱 その日暮らし的発想 NED-WLT 紅玉の甘い戯言 ジョンソン的ロンドン生活 葛西臨海公園・鳥類園Ⅱ あさひろむ おおやのデジスコ散歩道 I just happe... enjoy*photo! 野鳥たちとの思い出 お月さまになりたい。 習志野ぶら~り 「時間よ止まれ」 Tokyo Radio ... アコースティックな風 気ままな時間を ゆったりと 小さなりんごのドイツで放浪記 最新のトラックバック
タグ
以前の記事
2018年 01月 2017年 11月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 more... 検索
ブログパーツ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||