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2009年 07月 04日
映画鑑賞記「ディア・ドクター」
鑑賞日:09.07.03 鑑賞場所:シネマ・イクスピアリ

その嘘は、罪ですか。
映画鑑賞記「ディア・ドクター」_b0070020_1731376.jpg
<ストーリー> (cinemacafe.netより引用)
 街まで車で2時間もかかる僻村にやって来た、医大を出たばかりの相馬(瑛太)。研修医として赴任してきた彼を待っていたのは、看護師と一緒に診療所を切り回している、物腰の柔らかそうな中年医師、伊野(笑福亭鶴瓶)。数年前、長く無医村だったこの地にふらりとやってきたこの医者は、高血圧から心臓蘇生、地方老人の話し相手まで、様々な病を一手に受け、村人から絶大な信頼を寄せられていた。そんなある日、伊野の元にかづ子(八千草薫)という独り暮らしの未亡人が診察にやってくる。ずっと診療所を避けていた彼女だったが、次第に伊野に心を開き始める。そして、彼女の診療を通じ、伊野が隠していた意外な素顔が浮かび上がってくる――。




<感想>
映画鑑賞記「ディア・ドクター」_b0070020_17363682.jpg過疎地の医療という、日本の暗部にあえて切り込み、それでいて、ユーモアを織り交ぜながら、ニセ医者でありながら、村人から「神様」のように慕われる主人公。
しかし、村人からの期待が高まるにつれ、自らが犯した罪に苛まれながらの葛藤に悩みながらも、懸命に医療に真摯に向き合う姿が痛ましい。
心の通った関係がために患者についた嘘が、彼の心のすき間にできた傷を大きく広げることになるとは・・・。観ていてとても重い課題を共有されたような気持ちになった。
医者は、時に患者に嘘をつくときがある。 ただ、その時は、かなりの覚悟を持っているのであろう。
よかれと思っても、それは患者や患者の家族を傷つけることになるかも知れないので、なおさらである。

映画鑑賞記「ディア・ドクター」_b0070020_1737416.jpg引き込まれた原因のもう一つは、キャストが良かったからだろう。
初主演の鶴瓶さん、彼の憎めないキャラがベースにあるので、こっちまで和んでしまう。その上で、医療行為を演じている真剣な眼差しも、なかなかうまいと思った。
脇を固める、瑛太くんは若いけれど場面にうまく溶け込んでいるし、看護師の余さんも、西川作品には常連の香川さんもさすがにうまい間合いで演じているなあって感心した。
八千草薫さん、往年の美人女優だが、老いてもどこかに色気を感じるのはさすが。

映画鑑賞記「ディア・ドクター」_b0070020_17373097.jpg 前作「ゆれる」での微妙な心理描写で、自分の心を鷲掴みにした西川美和監督。
今作も、前作に勝るとも劣らない内容で、西川監督とそれを支えるスタッフの丹念さと力量に終始圧倒された。
大仕掛けなセットや大金を投じたVFXが全盛な今の映画ビジネスだが、そんな小手先だけの作り方ではなく、じっくり練り上げられたストーリーと観る人の目を釘付けにする美しい構図の映像は、きっと国外で観た人も感動するであろう。
ボクは彼女が、黒澤明、小津安二郎という日本を代表する名監督に肩を並べるほどに、これからも成長していくことに疑う余地がないと思う。

by dosanko0514 | 2009-07-04 17:38 | 映画は楽しい


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