2005年 11月 26日
ボクの住むベイタウンはできてから10年あまりの新しい街だ。 都市計画で、ヨーロッパの街並みをイメージした中層集合住宅を中心部におき、それを城壁のように囲む高層の集合住宅からなっている。 メインストリートは石畳が敷き詰められ、初めて訪れる人には強烈な印象を与える。 ボクもこの街並みに一目ぼれした一人なのだ。 そんな街の自慢の一つが「公民館にあるピアノ」だ。 公民館と言っても、ここのは普通ではない、図書館併設でいくつかの集会室のほかに音響を重視した音楽ホールがあることだ。 ホールといっても、100名くらいしか入らない広さだが、反響とか遮音の仕組みは、専門の設計事務所が設計しただけあって、有名なホール並みという。 そのピアノというのは、写真の真ん中に鎮座するものだ。 実は、このホールにピアノを導入する話が持ち上がってから初めてそのピアノの名前を知った。 ちょっと見えにくいが「FAZIOLI」(ファツィオリ)とある。 ちょっとはピアノを知っている人だったら、日本では「ヤマハ」、「カワイ」、海外では「スタウィンウェイ」、「ベーゼンドルファー」というメーカーは聞いたことがあるだろう。 このピアノはイタリア製で日本にもまだ数台しか輸入されていないという。 FAZIOLI社は1978年にもともとピアニストであったパオロ・ファツィオリによって創設されたピアノ専業メーカーだ。 世界一のピアノを作るという目標をかかげ、あのストラディヴァリがバイオリン用木材を選んだ同じ場所の部材で響板を作ったり、スタウィンウェイも省いた工程をあくまでも手作業で行ったりと、手抜きすることのないピアノ作りを行った。 その甲斐あって、発売当初から世界のピアニストたちからの絶賛を浴び、わざわざCDのレコーディングにこのピアノを指定しているピアニストも多い。 完全手作りなため、年間に送り出す台数には限りがある。 日本では、ようやく、滋賀県栗東町のホールに納入された程度である。 写真はわが街のホールにあるピアノ「F278」だ 新品だと1450万円だそうだ! なぜ、こんなに高価なピアノが公民館のホールにあるのか? それは、公民館建設前から、住民が建物の外観から施設の内容までプランすることを任されていたからにほかならない。 住民有志が、研究会を開き、施設に図書館、音楽ホールや、託児所やデイケアとかアンケートなどを通じて自分らの街にふさわしい施設の案を練っていった。 その中で、街在住のピアニストやピアノ教師などから、ピアノが思いっきり弾けるホールとそれにふさわしいピアノの実現を要望する声が上がった。 いろいろな議論の末、ホールは音響的にすばらしいものに決まったが、ピアノの選定に難航した。 公民館の備品は基本的に自治体が用意する。しかし、ピアノのために出された予算は、アップライトピアノが買える程度。とてもコンサートに耐えられない。 そこで、有志が立ち上がり、ある楽器商を通じて例のFAZIOLIを借り受けることになったのだ。 まだ、この時点では購入資金もないのでホールの杮落としに使うだけだったのだが・・・。 FAZIOLIに触れたピアニスト全てがスタウィンウェイにもないぬくもりに満ちた音色に魅せられ、また弾いてみたいとの声を上げた。 それから、このピアノを街の住民の所有物にするための運動が始まった。 この運動に賛同した有名ピアニストや音楽家のチャリティコンサートや、街のピアノ教師に師事している生徒たちによる「FAZIOLIを弾く会」などで購入資金を集め、なんとか購入のめどが立ったのだった。(写真はFAZIOLIを弾く会風景) こうして、わが街自慢のピアノは公民館のホールで次の出番を待っている。
by dosanko0514
| 2005-11-26 14:34
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