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2006年 02月 11日
映画鑑賞記「ミュンヘン(Munich)」
鑑賞日:06.02.10 鑑賞場所:AMCイクスピアリ16
現在でも紛争の火種がくすぶっているパレスチナ問題。
パレスチナという一つの土地を巡って、異なる宗教、異なる民族が、あるときは共存し、あるときは敵対し、長く複雑で血なまぐさい争いの歴史が、この映画の伏線にある。
この問題の大きさを世界中の人間に知らしめたのが、この「ミュンヘン」オリンピックの人質事件だ。
自らユダヤ人でもあるスピルバーグ監督が、史実を元に、ダイナミックにかつ冷静な演出でその真相に切り込んでいく。
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<ストーリー>(なぞるとよく読めます)
1972年9月5日未明、ミュンヘンのオリンピック選手村に、パレスチナ・ゲリラ「ブラック・セプテンバー」のメンバーが侵入し、イスラエル選手団の選手・コーチ・役員を人質にとって立てこもる。この模様は全世界のTVに配信された。
ゲリラのメンバーは人質を連れて空港まで来たが、ここで悲劇が起きた。
西ドイツ警察の待ち伏せ攻撃が不発に終わり、人質全員が殺され、ゲリラの一部が逃走するという大失態の結末となった。
この事件に、イスラエル国民は激怒し、イスラエル首相のゴルダ・メイアは、自分たちでこの事件に関わったと思われるパレスチナ人への報復を決意する。
 その任務にイスラエルの諜報機関モサドのメンバーであるアヴナーが選ばれた。
彼は、英雄の父を持ち、ドイツ育ちで若き愛国心に溢れた青年だった。
アヴナーは、暗殺のターゲットのなる11人のリストを渡され、ヨーロッパに旅立つことになる。身重の妻にこの任務について、何も話さずに。
ヨーロッパに渡ったアヴナーは、まずジュネーヴでスイス銀行の口座に用意された活動資金と4人の仲間を得る。
4人の仲間は、普通の市民のようであったが、みな、スパイとしての能力は十分(スティーヴ、カール、ロバート、ハンス)であった。
 5人のスペシャリストは、ヨーロッパ各地を回り、パレスチナ人を一人一人消していく。しかし、当初は指示を受けるまま、愛国心に燃えて任務を遂行していたが、次第に自分たちへの報復の恐怖とともに、暗殺自体の意義に対する疑念も起き、心の乱れが生じてくる。

私たちは正しいことをしているのか? 果たしてこの任務に終わりがあるのか?
そして、愛する家族の元へ帰ることができるのか?
仲間が一人、また一人と消えていくとき、アヴナーのとった行動とは?
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<感想>
史実に基づいて描かれているので、ミュンヘンの人質事件については、多少の知識があったのだが、その後の報復合戦がこんなに悲惨だったとは、思いもしなかった。
ヨーロッパ各地にいるパレスチナ有力者を毎回、あらゆる手段を尽くして探し出し、周到な準備の元で殺害する。
これが、いわゆる「スパイ」と呼ばれる秘密諜報部員の中でも最高級の仕事なのだろう。
謎のフランス人が標的となるパレスチナ人の情報をもたらしてくれることなど、事実だとしたら驚きだ。CIAやKGBなどの国家のスパイ以外に裏社会があることなど知らなかったからだ。
ギリシャの潜伏先にたまたま敵であるパレスチナ・ゲリラがやってきたときの緊張した空気はこっちまで固くなった。
唯一、パレスチナ人以外の暗殺だったオランダ女性の場合、ちょっと生々しくて言葉も出ない。(後で夢に出そうだ)
しかし、爆破とか拳銃での暗殺シーン、リアルというか、映像での迫力はさすがスピルバーグ監督。
こういった、史実モノが一番、監督としての才能を十分に発揮できていると思う。

見終わってから、一番感じたことは、いくら憎いからと言って暗殺しても、次の標的が増えるだけで、何の解決にならないということだ。

by dosanko0514 | 2006-02-11 15:05 | 映画は楽しい


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