2006年 03月 19日
鑑賞日:06.03.17 鑑賞場所:シネマイクスピアリ(レイトショー) 複数のストーリーが同時進行で描かれ、複雑な利害関係と人間関係が観る者を混乱に陥れる。 この映画は予習と復習が絶対必要だ。 2000年度アカデミー賞では4つのオスカーに輝いた「トラフィック」の製作チームが再びタッグを組んで作った問題作。 地球は陰謀でできている。 <★助演男優賞>ジョージ・クルーニー <ストーリー>(公式HPから一部引用)<なぞると良く読めます> 陰謀は原油国であるペルシャ湾岸諸国から始まった。 若くカリスマ性を備えた改革志向のナシール王子はアメリカの石油会社との間にある、長年にわたる関係性を変えようとしていた。王位継承者であるナシールは、テキサス州にある巨大企業コネックス社にあった天然ガスの採油権を、より条件の良い中国へ供与してしまう。これはコネックス社とその地域にあるアメリカ石油ビジネス界にとって大きな打撃となる。 一方、ジミー・ポープが経営す小規模な石油会社キリーン社は、誰もが欲しがっているカザフスタンの採油権を獲得した。これにより、失った生産力を確保するために新しい契約先を必要としていたコネックス社にとって、キリーン社は非常に魅力的な会社となる。 そして、この2社が合併する話に、今度は司法省とワシントンの権力ある法律事務所スローン・ホワイティングが関心を抱き、精査に乗り出してくる。 ボブ・バーンズ(ジョージ・クルーニー)は、息子の大学進学を期に、間もなく組織に身をささげたキャリアを終え、残された日々を楽なデスクワークで過ごすことを考えているCIAベテラン諜報員だ。仕事人間であったボブは、自らの仕事がアメリカ政府に利益をもたらし、母国をより安全な場所にしていると信じて疑わない人物だった。 ボブの最後の任務は、テヘランの二人の武器証人とスティンガー・ミサイルを手にした謎のエジプト人の暗殺だった。武器商人は始末したが、エジプト人は取り逃がしてしまう。 ワシントンに戻ったボブは、昇進を約束に最後の極秘指令(ナシール王子の暗殺指令)を受ける。しかし、現場で接触者の一人の裏切りにより、王子暗殺は果たせず、ボブは敵に囚われ恐ろしい拷問を受けて辛くも本国に戻る。戻ったボブは、CIAによってスケープゴートにされ、組織から裏切られたことを知る。 ベネット・ホリディ(ジェフリー・ライト)はスローン・ホワイティングに勤める野心溢れる弁護士。ワシントンの政界の深部を通じて行われるコネックス社とキリーン社の合併という、細心の注意を要する仕事の手引き役を担当している。ベネットにとっては、合併を渋るキリーン社のカザフスタンで胡散臭い取引を裏付ける資料を見つけ司法省に提供することでキリーン社を不利な立場に追い込む必要があった。 ブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)は妻と二人の息子とともにジュネーブに住むエネルギー商社のエリートエネルギーアナリストだった。会社命令でナシール王子一家が開いたパーティに参加したブライアンは、悲劇的な事故によって息子を亡くしてしまう。この事態から、ナシールは償いのためにもブライアンに自らの改革案の実現を手助けするビジネスの機会を提供する。しかし、この機会は悲観にくれる妻との距離を遠ざけるものであった。 ベネットのボスであるディーン・ホワイティングはナシールが結んだ中国との契約を取り消そうとする。ディーンは、ナシールの弟であるメジャール王子ならばアメリカのビジネス界により従順になると踏み、ナシールの政治活動の終焉を巧妙に企てながら、老齢の首長に王位継承にはメジャールを選ぶように圧力をかける。 コネックス社の製油所で出稼ぎ労働者として働くサリームと息子のワシームは、採油権を中国に買収されたことによって解雇され、瞬く間に先行きが不安定になってしまう。いつの日かパキスタンに戻りたいと願っていたサリームの夢、そして息子が望んだよりよい生活への願望は打ち砕かれ、一方的な仕打ちに対する怒りを募らせていく。そんな中、ワシームとその友人は、希望の無い不憫な世界の中で尊厳を持って待遇される地元のイスラム神学校に慰めを見出す。神学校で、ワジームとファルークはカリスマ性がある危険な人物(スティンガー・ミサイルを手にした謎のエジプト人)の手の中に身をおくことになる。それが、自爆テロへの誘いとは知らず・・・。 <感想> 映画の前半は、それぞれのストーリーに登場する人間関係の把握に戸惑い、話の筋が全然つかめなかった。そのうち、ジョージ・クルーニー扮するCIA諜報員が、自分のやってきたことに疑問を感じ、利用されていることを知るあたりから、利害関係が少しずつ分かってくるようになってきたがまだ謎が多い。 しかし、観終わって、翌日、公式HPを見るなりして復習して、なんとかストーリーが見えてきた。 あと数十年で枯渇すると言われている石油、天然ガス。 その中にあって、供給する側、すなわち原油産出国とメジャーと呼ばれる石油産業が巨万の富を他に奪われまいと、あらゆる陰謀(賄賂から、暗殺まで)を裏で行っていることがこの映画から分かる。そして、アメリカのCIAもその陰謀の片棒を担がされている。 CIAのベテラン諜報員であるボブもその陰謀に操られていた一人だ。 このストーリーはフィクションではあるが、元CIA諜報員のロバート・ベアの自伝「CIAは何をしていた?」から脚本/監督のスティーヴン・ギャガンは多くのエッセンスをもらい、実際に世界各国の石油に関係する人とのインタビューを行い、「シリアナ」の脚本のヒントを得たそうだ。 映画の中では、誰が正しいとか悪いとか判断できるような状況ではない。 全員が何らかの罪を犯しているようにも見える。 それが、石油という富を支配している人間たちの姿なのだろう。 一番、ショックだったのは、ボブがナシール王子の車列に近づき、ナシール王子に陰謀を警告しようとした矢先、CIA本部からの遠隔操作で、上空の無人偵察機からピンポイントで爆弾が投下されたシーンだった。 これなら、CIAは世界中、どこでも簡単に、ゲーム感覚で攻撃可能というわけだ。 それと、最後にタンカーにミサイルを積んだ船で体当たりするワシーム。あそこに至るまでの経緯を、何度か挿入されていたけれど、やはり、貧富の差とか、あまりに身勝手な欧米諸国に対する長年の憎しみが若者を過激にさせる最大の要因なんだろうと思う。 今年のアカデミー賞で助演男優賞に輝いたジョージ・クルーニー。 この映画のために30日間で30ポンド(13.5kg)増やし、あごひげを生やして役作りにはげんだところはさすがプロ。爪を全部はがされるところは痛々しかったが・・・。 マット・デイモンも陰謀の渦中にあって、危うく命を落としそうになるアナリスト役を、冷静な演技でこなしている。 石油や天然ガスを巡る各国の駆け引きや紛争、今の世界を見渡すと、いつでも、どこでも起きていそうな話だ。お隣の中国のエネルギー問題。そして、アメリカ政府にしても、大統領が石油会社出身だということ、この映画との関係からして、かなりやばいことをやってきたなって思うのはうがった考え方だろうか?
by dosanko0514
| 2006-03-19 10:14
| 映画は楽しい
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