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2006年 12月 17日
映画鑑賞記「硫黄島からの手紙」
鑑賞日:06.12.15 鑑賞場所:シネマ・イクスピアリ16

 今や、アメリカ映画を語る上で欠かせない巨匠となったイーストウッド監督が描く、硫黄島2部作。その2作目。これは日本側の視点で描いている。
日本本土に戻ることが叶わなくなった硫黄島で死を覚悟した日本兵たちは、何を思い、どう戦ったのだろうか?
イーストウッド監督はこの映画で「反戦・嫌戦」を訴えている
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<ストーリー> (公式HPより)
 2006年、硫黄島。
地中から発見された数百通もの手紙。それは、61年前、この島で戦った男たちが、家族に宛てて書き残したものだった。届くことの無かった手紙に、彼らは何を託したのか・・。
映画鑑賞記「硫黄島からの手紙」_b0070020_1033892.jpg 戦況が悪化の一途をたどる1944年6月、ひとりの指揮官が硫黄島に降り立った。陸軍中将、栗林忠道(渡辺謙)、彼はアメリカ留学の経験を持ち、それゆえにアメリカとの戦いの厳しさを誰よりも知り尽くしていた男。本土防衛の最後の砦というべき硫黄島の命運は、この男に託された。
着任早々、長年の場当たり的な作戦を変更し、部下に対する理不尽な体罰をも戒めた栗林に、兵士たちは驚きの目を向ける。今までのどの指揮官とも違う栗林との出逢いは、硫黄島での日々に絶望を感じていた西郷(二宮和也)に、新たな希望を抱かせる。従来の常識にとらわれない栗林のやり方は、古参の将校たちの反発も呼んだが、一方で頼もしい理解者もいた。そのひとりが、ロサンゼルス・オリンピック馬術競技の金メダリスト、「バロン西」こと西竹一中佐(伊原剛志)だった。
硫黄の臭気が立ち込める灼熱の島、食べ物も飲み水も満足に無い過酷な状況で、栗林の指揮のもと、掘り進められる地下要塞。島中に張り巡らせたこのトンネルこそ、米軍を迎え撃つ栗林の秘策だったのだ。
1945年2月19日、ついにアメリカ軍が上陸を開始する。その圧倒的な兵力の前に5日で終わるだろうと言われた硫黄島の戦いは、36日間にもおよぶ歴史的な激戦となった。死こそ名誉とされる戦争の真っ只中にあって、栗林中将は兵士たちに「死ぬな」と命じた。最後の最後まで生き延びて、本土にいる家族のために、一日でも長くこの島を守り抜け、と。栗林の奇策に反発し、軍人らしく玉砕を貫こうとする伊藤中尉(中村獅童)、憲兵隊のエリートから一転、過酷な戦地へと送り込まれた清水(加瀬亮)、戦場にあってなお国際人であり続けたバロン西、まだ見ぬ我が子を胸に抱くため、どんなことをしても生きて帰ると妻に誓った西郷、そして彼らを率いた栗林もまた、軍人である前に、家族思いの夫であり、子煩悩な父であった。
 61年ぶりに届く彼らからの手紙。そのひとりひとりの素顔から、硫黄島の心が明かされていく。


<感想>
 前編の「父親たちの星条旗」で硫黄島の戦いが歴史的な激戦であったことを理解したが、その原因が日本軍の栗林という司令官の秘策にあったことは、本編で知った。
その栗林中将が若い頃アメリカに渡り、アメリカの国力の豊かさを身をもって知っていたことが、彼をこのような防御策になったのだろう。実は、海軍司令官山本五十六もそれを知っていたから開戦に反対していたことを、最近放映されたテレビで知っていた。
 本土防衛にとって重要な島の死守を命じられてきた栗林中将。しかし、水も食料もそして兵站も援軍も無い状況下で何を思って作戦指揮をしていたのであろうか。ところどころに人間味のある言葉を発していたのが印象的だった。
 アメリカ軍が圧倒的な兵力を持って上陸して、静かに見守っていた日本軍は満を持して一斉に反撃するシーン。そして、徐々に日本兵士が倒れていくシーン。観ていて痛みが伝わってくる。特に、手榴弾で自決するシーン。 生き延びて欲しいという思いが強かった。

映画鑑賞記「硫黄島からの手紙」_b0070020_10341937.jpg この映画の特色として、これは前編との共通点でもあるのだけれど・・・、日米の戦闘員をフェアに扱っていることだ。 捕虜の扱いにそれが見て取れた。 日本兵の捕虜をアメリカ兵が撃ち殺すシーン。 アメリカ兵を日本兵が銃剣で刺し殺すシーン。 共に悲しい話なのだが、バロン西が負傷し捕虜となったアメリカ兵と言葉を交わすシーン。そして、残された母からの手紙を読むシーンが印象に残った。 その後、清水がポツリと「オレのオフクロと同じじゃないか・・・、鬼畜米英じゃないじゃないか」言うところに、この映画からの強いメッセージを感じた。

 太平洋戦争を描いた映画は、数多くあるが、戦争での被害者は戦うもの全てであることを痛切に描いたものはどのくらいあっただろうか?
 
 数年前、イーストウッド監督がこの映画の製作を発表したニュースを聞いて、本当に日本人による日本語の映画が作れるのか、正直、疑問だったが、過去のアメリカ映画で日本を描いたような違和感が全く無かったし、せりふにしても造作にしても非の打ち所が無く、映画の中に惹きこまれてしまった。
 
 ラストで、アメリカ軍の捕虜となった伊藤中尉と西郷、二人の胸中は全然違うだろうなと思った。
隣に座った女性は後半ずっと泣き続けていた。しかし、ボクは涙は出なかった。
こんな戦争を仕掛けた旧日本軍の愚かさに腹が立っていた。
<コネタ>
映画鑑賞記「硫黄島からの手紙」_b0070020_1033355.jpg この映画に出演している日本人俳優の中には海外で活躍している人も多い。
西郷の戦友で、戦闘中に自決した野崎役で、現在ハリウッドで俳優とコメディアンをしている松崎悠希さんのブログが面白い。
彼は「ラストサムライ」にも出演していた。(藤田中尉役の渡辺ヒロシさんも同じ)
製作には、あのポール・ハギスが参加!

by dosanko0514 | 2006-12-17 10:35 | 映画は楽しい


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