2008年 02月 09日
鑑賞日:08.02.08 鑑賞場所:シネマイクスピアリ 巨匠・山田洋次監督が描く 激動の昭和を生きた家族の物語 <ストーリー> (公式HPより引用) 昭和15年の東京。父(坂東三津五郎)と母(吉永小百合)、娘の初子(志田未来)と照美(佐藤未来)の野上家は、お互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と愛称で呼び合う仲睦まじい家族だ。小さな家庭の穏やかな日常は、ドイツ文学者である父・滋が治安維持法で検挙された朝から一変する。戦争に反対することが、国を批判するとして罪になる時代だった。 不安を募らせる母と娘たちのもとに、温かい思いやりを持った人々が次々に訪れる。父の教え子で出版社に勤める山崎(浅野忠信)は、父との面会申請のために奔走し、やがて一家から「山ちゃん」と呼ばれる大切な存在になる。父の妹で美しく快活な久子(檀れい)は、思春期を迎えた初子とおてんばな照美の良きお姉さん役で、いつしか山ちゃんにほのかな想いを寄せるようになる。 そして、変わり者の仙吉叔父さん(笑福亭鶴瓶)は、あけっぴろげで遠慮のない性格のため、いくつもの騒動を巻き起こすのだった。離ればなれになった家族をつなぐのは手紙だった。まるで日記を書くかのように毎日の出来事を父に綴る初子と照美。そんな娘たちの成長を見守ることが母べえの心の支えだった。そんなある日、野上家に思いがけない便りが届く・・・。 <感想> 山田洋次監督初の時代劇『たそがれ清兵衛』、続く『隠し剣 鬼の爪』、『武士の一分』の時代劇三部作ですっかり山田組の虜になったボクが公開を待ち遠しく思っていた作品だった。 舞台は日中戦争が泥沼化し、次第に米英との戦いへと国が転げ落ちていく昭和15年の東京だ。 戦争反対と唱えるだけで検挙され、寒く汚い留置場に放り込まれ、厳しい取調べに遭うことなど、現代に生きるボクらには想像もできない世界だ。 そんな昭和の中でも一番厳しい時代にあって、「母べえ」は、たとえ夫が牢獄に入れられようと、夫の無実を信じ、周りからの圧力にも屈せず、父から勘当を言い渡されても、自分の信念を決して曲げようとはしなかった。それでいて、二人の娘に対しては辛い気持ちを笑顔で隠し、温かく見守っていた。 その辛い立場だった母べえの支えとなったのが、山ちゃんと久子だったのだろう。暗く沈みがちな家族にちょっとユーモラスな山ちゃんと、父に似て利発で面倒見の良い久子の存在が二人の娘の成長に不可欠だったと思われる。 太平洋戦争が始まり、最初の正月に父が獄死し、山ちゃんも戦場へ向かう海で亡くなり、久子も広島の原爆の犠牲となった。その後の母べえたちの暮らしは映画では描かれなかったが、ラストでの臨終のシーンから、二人の娘が立派に成長したことが分かる。 戦中を生き抜き、女手一つで子供を育て上げた女性の強さが伝わるストーリーだった。 戦後、教員をしながら結婚し、夫の死後、保母の資格を取得して3人の子供を育て上げたボクの母の力強さとダブって見えるところがあって、心の中で「母さん、ありがとう」とつぶやいた・・・・。 主役の吉永小百合さん、とても還暦を越えられた方とは思えない演技にただただ脱帽、最敬礼だ。 多少肌には苦心の跡が見られるが、身のこなしは30歳代、おまけに服を着たまま海を泳ぐシーンを熱演し、これだけでも見る価値はある。 山ちゃんを爽やか(?)に演じた浅野クン、役者としての幅が広がった感があり、まだまだ活躍しそうな俳優だ。 映画全体の感想としては、ストーリー的には穏やかな展開だったので感動的な場面は少なかったと思うが、シーンの一つ一つに山田監督の細やかな演出がちりばめられていて、観ていてワクワクする部分は多い。 何を置いても、映画に込められた「戦争の悲劇」への山田監督や吉永小百合さんの怒りに近い思いが、観ているボクにも確実に伝わってきた。
by dosanko0514
| 2008-02-09 17:27
| 映画は楽しい
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