2006年 10月 28日
鑑賞日:06.10.21 鑑賞場所:シネマ・イクスピアリ16 今から60年前、日本は太平洋戦争でアメリカに負けようとしていた。軍は劣勢を跳ね返そうと究極の戦術を作り出した。それは「特攻」。今で言う「自爆攻撃」。自らの命を道連れに敵に体当たりしようという若者がいた。 <ストーリー> (公式HPより抜粋) 甲子園の優勝投手並木浩二(市川海老蔵)は、大学進学後に肩を痛めて自慢の速球が投げられなくなり、エースの座を失ってしまう。それでも野球への情熱が消えることはなく、並木は”魔球”と名づけた新しい変化球の完成に復活をかける。しかし、世界は戦いの時代を迎えようとしていた。ついに日米開戦、太平洋戦争は日ごとに激しさを増していく。愛する家族や友、そして恋人と別れて海軍に志願する並木。そこには彼と同じく、大切な人たちを守るために戦うことを決意した若者たちがいた。日本の敗戦が日に日に濃厚になっていく中、海軍は最後の秘密兵器”回天”を開発する。 脱出装置のない定員1名の回天に乗って敵艦に激突するというこの究極の任務につくことを、並木を始め多くの若者たちが自ら望むのだった。けれども彼らの胸に迷いや怒り、悲しみが微塵もないわけではなかった。若者達を乗せた潜水艦は海へと潜り、そしてついに出撃のときが訪れる。 <感想> 実は、観る予定のなかった映画だった。 会社の先輩から無料鑑賞券をもらい、公開終了が近いづいた中、慌てて観たものだった。 戦争映画なのだが、戦闘シーンが全くない。 ほとんどが、1隻の潜水艦の中でのやりとりだ。 しかし、この映画はとても、心に重く残る映画だった。 戦況悪化の中で、学徒出陣に参加する並木。その時期、学生にはまだ兵役が免除されていたのにもかかわらずに・・・。 戦争とはどのようなものなのか、今でこそ当時の記録が多く残されている現代、悲惨で生きて戻ることがほとんどできない戦地へ赴くことの思いは、僕らには想像しがたいものがある。 ただ、映画の中では、「残していく家族、恋人を守りぬくため自分の命を捧げる」とある。やはり、そのような状況下ではそう考えてしまうのだろう。 それと、当時、兵隊に行ってお国のために死ぬことが非常に美化されていたため(特攻で散った隊員は軍神と言われたそうだ)、兵役に就かぬ事が後ろめいた状況にあったのもわかる。 そういった葛藤というものを並木や同窓の学生から汲み取ることが出来た。 もう一つの見所は、あまり知られていない”回天”に関する秘話だ。 山口県の秘密基地で作られた「人間魚雷」。一度ハッチを閉めると、中からは開けることはできず、発進したら最後、基地に帰ることができないもの。 酸素魚雷を改造して人間がかろうじて入れる空間を作ったものだから、居心地は最悪だし、操縦は極めて難しいときている。 また、故障も多いので、出撃しても、発進できないこともままあったらしい。映画の中でも、北中尉の乗る回天が故障して、2号艦の佐久間少尉が発進していくシーンがあった。 その後、帰還した隊員が悔し涙を流すシーン、とても複雑な気持ちで観ていた。助かったと喜ぶべきなのか、死を覚悟していたのに果たせなかった悔しさがあったのか・・・。 極限の心理は難しいのかもしれない。 結局、並木少尉も、故障で出撃できずに帰還するわけなのだが、終戦直後の光基地で訓練中に”回天”の事故で命を落としてしまう。 もう少し早く戦争が終わっていたら、こうした有望な若者の無駄な死を防げたものを・・・という思いに駆られるシーンだった。 残った家族のシーンを見るにつけ、そう思った。 戦後60年、今でも太平洋戦争の是非論が政治的にも国際的にも繰り返されているのだが、一つだけ言える事は、戦争で一番に傷つくのは弱者であること。 政治家の無責任な発言がその弱者をさらに苦しめることはしてはならない。
by dosanko0514
| 2006-10-28 18:22
| 映画は楽しい
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